「罠に落ちた白衣の天使」第1話 患者の死
登場人物(主な登場人物)
佐倉京子:大東病院、看護婦 浅沼順次:大東病院勤務、医師
佐倉奈々:同上、京子の妹 准看護婦 浅沼順一:会社員、順次の兄
第1話 患者の死
「佐倉君、点滴を頼むよ!」医師が言うと「はい、やっておきます」若い看護婦が答えて病室を出て廊下を歩いていく。
看護婦の名は佐倉京子で24才だ。
京子はいつものように、薬剤室から薬品を持って戻って来た。
「おじいちゃん、具合どう?」声を掛けても、返事が無い。
京子が世話をする老人は、寝たきりの不自由な体で返事もできない。
「交換するね」京子は点滴のパックを交換していく。
空パックと交換した京子は「また来るからね」笑顔で病室から出ると「佐倉君、今夜どう。付き合って、くれないかな?」廊下で話し掛けたのは浅沼順次だ。
「今夜は、用事がありますから…」京子は順次の根暗で、執念深い性格が嫌いだった。
「それじゃ、都合のいい日はいつかな?」
「申し訳ありませんが、患者が待っておりますので…」話を遮るように京子は次の病室に入った。
「チェッ、生意気な女だ。懲らしめてやるか!」順次は考えをめぐらしていく。
翌日、順次は「佐倉君、患者に栄養剤を頼むよ。僕の兄さんの嫁さんだ。大切に頼むよ」「分かりました。栄養剤ですね?」患者はまだ若い女性で、ぐっすりと眠っている。
京子は薬剤室に入り「栄養剤は、確かオレンジだわ」京子はオレンジ色を捜した。
「これだわ。オレンジだ!」京子は色だけを確認して、名前を確認しなかった。
パックを手に取ると急いで病室に戻り「はい、栄養剤よ」京子はパックの交換を終わると、病室から出た。
数時間後、京子は病室を見回っている。
「浅沼さんの、兄嫁の病室だわ…」京子は病室に入り、患者の様子を見回っていく。
「変だ!」京子は、順次の兄嫁の異変に気が付き、手を取って脈を調べた。
「脈がない!」京子は枕元のベルを押した。
「どう、なさいました?」同僚の看護婦が話しかけてくる。
「浅沼さんの、浅沼さんの脈がありません!」
「直ぐ、医師を行かせます!」看護婦が告げると、京子は心臓マッサージを始めた。
それから、1分ほどして順次が走ってきた。
「義姉さん。義姉さん!」浅沼は脈を取ったが「だめだ、冷たくなってる。臨終だ!」浅沼は死を宣言した。
「どうして!」悔しそうに、点滴のパックを剥ぎ取ると「こ、これは!」驚いた顔の順次に気づいて、京子もパックを見ると「そんな~!」京子は悲鳴を上げて、床に崩れた。
「栄養剤じゃない。血圧降下剤だ…」オレンジ色のパックだったが、栄養剤ではなく、血圧降下剤だった。
高血圧の患者に使用する薬を、貧血気味の患者に使用したら死亡は免れない。
それは、京子にも分かっているから「そ、そんな…。そんな…」京子は泣きながら、叫んでいる。
「佐倉君、これはとんでもない事件になるぞ」順次に言われて、震え出す京子だ。
「とにかく、隠密に処理しないと」順次は、京子を伴って院長室に向かった。
「わかっているね。絶対に口外するなよ!」京子は歩きながら、黙って頷いた。
二人はドアをノックして院長室に入ると、院長がソファーに座っている。
「院長、実は……」浅沼は院長に事情を説明していく。
話を聞き終えると「佐倉君、とんでもないことをしてくれたね。薬を間違えるなんて、君らしくないな」院長も困った顔をした。
「申し訳ありません…」京子の目からは、涙が流れている。
「相手が違うよ。謝る相手が!」院長はなおも「新聞ざたになったら、経営に行き詰まるかも…」宙を見ながら言う。
「院長、兄貴を説得しますから、無理を聞いてください。そうすれば、マスコミには流れません」
「そうだった。浅沼君の兄嫁だったね。わかった、浅沼君に任せる。無理も聞くから、マスコミにだけは流れないように頼むよ」院長は浅沼に交渉を一任した。
「佐倉君、今夜、付き合ってくれ。兄貴に合わせてやるよ。院長、よろしいですよね?」
「いいよ。頼んだよ」院長の許可をもらった京子は、夜勤を同僚と交代して、浅沼の兄が住む家に弔問に行くことになった。
浅沼の兄の住む家は、郊外で、病院からは20分も掛かった。
自宅はかなり広い敷地で、屋敷を囲むかのように花輪が飾られている。
(私のせいよ。私のせいで…)京子の目からは、自然と涙が流れていく。
「行こう!」肩を浅沼に抱かれて、京子は玄関から入っていく。
家の中には、弔問客がたくさんいるが「兄貴、話がある!」順次は兄の順一と小さな部屋に入った。
暫くたってから「佐倉君、君もきたまえ!」順次が京子を呼んでいる。
京子も泣きながら、中に入ると「京子さんとか言ったよね。とんでもないことをしたもんだね」「申し訳ありません!」京子は床に土下座した。
「僕は、あまり話を大きくしたくないんです。弟の立場もありますし…」低い声で言う。
「兄貴は、ミスを見逃そうと言ってるんだ」
「ありがとうございます…」京子は再び、額を床に付けた。
「しかし、条件がある。償って欲しい」京子の顔が緊張していく。
「僕は、あまり家事をしたことがないんだ。君に家政婦になって、京子と同じ事をして欲しい」順一の言葉に戸惑う京子だ。
「でも、毎日は…」言葉を濁すと「毎日とは言ってない。土曜日と日曜日の週2日でいい。それを1年だ」
(でも、婦長や同僚がなんて言うだろう…)京子は職場の仲間が気になっている。
迷っていると「婦長と同僚には院長から言ってもらうよ」順次が横から言い「分かりました。それで許してもらえるなら、家事は私がします…」京子は俯いたまま言う。
その言葉を待っていたかのように、順次と順一の兄弟は顔を見合わせてニヤリと笑った。
(これで、京子を抱けるぞ)(こんな美人とオ○ンコができるなんて)そんな企みを、京子は知らなかった。
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佐倉京子:大東病院、看護婦 浅沼順次:大東病院勤務、医師
佐倉奈々:同上、京子の妹 准看護婦 浅沼順一:会社員、順次の兄
第1話 患者の死
「佐倉君、点滴を頼むよ!」医師が言うと「はい、やっておきます」若い看護婦が答えて病室を出て廊下を歩いていく。
看護婦の名は佐倉京子で24才だ。
京子はいつものように、薬剤室から薬品を持って戻って来た。
「おじいちゃん、具合どう?」声を掛けても、返事が無い。
京子が世話をする老人は、寝たきりの不自由な体で返事もできない。
「交換するね」京子は点滴のパックを交換していく。
空パックと交換した京子は「また来るからね」笑顔で病室から出ると「佐倉君、今夜どう。付き合って、くれないかな?」廊下で話し掛けたのは浅沼順次だ。
「今夜は、用事がありますから…」京子は順次の根暗で、執念深い性格が嫌いだった。
「それじゃ、都合のいい日はいつかな?」
「申し訳ありませんが、患者が待っておりますので…」話を遮るように京子は次の病室に入った。
「チェッ、生意気な女だ。懲らしめてやるか!」順次は考えをめぐらしていく。
翌日、順次は「佐倉君、患者に栄養剤を頼むよ。僕の兄さんの嫁さんだ。大切に頼むよ」「分かりました。栄養剤ですね?」患者はまだ若い女性で、ぐっすりと眠っている。
京子は薬剤室に入り「栄養剤は、確かオレンジだわ」京子はオレンジ色を捜した。
「これだわ。オレンジだ!」京子は色だけを確認して、名前を確認しなかった。
パックを手に取ると急いで病室に戻り「はい、栄養剤よ」京子はパックの交換を終わると、病室から出た。
数時間後、京子は病室を見回っている。
「浅沼さんの、兄嫁の病室だわ…」京子は病室に入り、患者の様子を見回っていく。
「変だ!」京子は、順次の兄嫁の異変に気が付き、手を取って脈を調べた。
「脈がない!」京子は枕元のベルを押した。
「どう、なさいました?」同僚の看護婦が話しかけてくる。
「浅沼さんの、浅沼さんの脈がありません!」
「直ぐ、医師を行かせます!」看護婦が告げると、京子は心臓マッサージを始めた。
それから、1分ほどして順次が走ってきた。
「義姉さん。義姉さん!」浅沼は脈を取ったが「だめだ、冷たくなってる。臨終だ!」浅沼は死を宣言した。
「どうして!」悔しそうに、点滴のパックを剥ぎ取ると「こ、これは!」驚いた顔の順次に気づいて、京子もパックを見ると「そんな~!」京子は悲鳴を上げて、床に崩れた。
「栄養剤じゃない。血圧降下剤だ…」オレンジ色のパックだったが、栄養剤ではなく、血圧降下剤だった。
高血圧の患者に使用する薬を、貧血気味の患者に使用したら死亡は免れない。
それは、京子にも分かっているから「そ、そんな…。そんな…」京子は泣きながら、叫んでいる。
「佐倉君、これはとんでもない事件になるぞ」順次に言われて、震え出す京子だ。
「とにかく、隠密に処理しないと」順次は、京子を伴って院長室に向かった。
「わかっているね。絶対に口外するなよ!」京子は歩きながら、黙って頷いた。
二人はドアをノックして院長室に入ると、院長がソファーに座っている。
「院長、実は……」浅沼は院長に事情を説明していく。
話を聞き終えると「佐倉君、とんでもないことをしてくれたね。薬を間違えるなんて、君らしくないな」院長も困った顔をした。
「申し訳ありません…」京子の目からは、涙が流れている。
「相手が違うよ。謝る相手が!」院長はなおも「新聞ざたになったら、経営に行き詰まるかも…」宙を見ながら言う。
「院長、兄貴を説得しますから、無理を聞いてください。そうすれば、マスコミには流れません」
「そうだった。浅沼君の兄嫁だったね。わかった、浅沼君に任せる。無理も聞くから、マスコミにだけは流れないように頼むよ」院長は浅沼に交渉を一任した。
「佐倉君、今夜、付き合ってくれ。兄貴に合わせてやるよ。院長、よろしいですよね?」
「いいよ。頼んだよ」院長の許可をもらった京子は、夜勤を同僚と交代して、浅沼の兄が住む家に弔問に行くことになった。
浅沼の兄の住む家は、郊外で、病院からは20分も掛かった。
自宅はかなり広い敷地で、屋敷を囲むかのように花輪が飾られている。
(私のせいよ。私のせいで…)京子の目からは、自然と涙が流れていく。
「行こう!」肩を浅沼に抱かれて、京子は玄関から入っていく。
家の中には、弔問客がたくさんいるが「兄貴、話がある!」順次は兄の順一と小さな部屋に入った。
暫くたってから「佐倉君、君もきたまえ!」順次が京子を呼んでいる。
京子も泣きながら、中に入ると「京子さんとか言ったよね。とんでもないことをしたもんだね」「申し訳ありません!」京子は床に土下座した。
「僕は、あまり話を大きくしたくないんです。弟の立場もありますし…」低い声で言う。
「兄貴は、ミスを見逃そうと言ってるんだ」
「ありがとうございます…」京子は再び、額を床に付けた。
「しかし、条件がある。償って欲しい」京子の顔が緊張していく。
「僕は、あまり家事をしたことがないんだ。君に家政婦になって、京子と同じ事をして欲しい」順一の言葉に戸惑う京子だ。
「でも、毎日は…」言葉を濁すと「毎日とは言ってない。土曜日と日曜日の週2日でいい。それを1年だ」
(でも、婦長や同僚がなんて言うだろう…)京子は職場の仲間が気になっている。
迷っていると「婦長と同僚には院長から言ってもらうよ」順次が横から言い「分かりました。それで許してもらえるなら、家事は私がします…」京子は俯いたまま言う。
その言葉を待っていたかのように、順次と順一の兄弟は顔を見合わせてニヤリと笑った。
(これで、京子を抱けるぞ)(こんな美人とオ○ンコができるなんて)そんな企みを、京子は知らなかった。

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