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「地獄の孤島」第1話  囚われた彩香

登場人物

    藤山彩香:友愛学園の理事長       片岡政志:友愛学園園長
    (別名、鈴木美里)           田中真理: 〃  保健婦
    藤山沙織:彩香の長女          村上淳子: 〃  職員
    〃 剛太:彩香の長男           後藤俊治:彩香の秘書、
    藤山裕二:彩香の義弟  
                        島津洋平:藤山彩香の実兄
    野田昌子:島の女医           〃 美保:洋平の妻
    高島信照:藤山沙織の同級生       〃 真弓:洋平、美保の娘

第1話 囚われた彩香

 「お母さん。何も、こんな時間に、出かけなくても…」
「そうは行かないの。急ぎの用事なんだから。これも仕事なのよ」
「わかっているけど、後藤さんが来るまで、待っていたら?」
「そんな余裕がないの。早くしないと、手遅れになっちゃうし」

 「わかったわ、気を付けてね。夜道は危険だから」
「わかっているわよ」中年と呼ぶにはまだ若い女性が、豪邸から車に乗って出かけた。
出かけた女性は、かつて藤山財閥を仕切った、藤山太郎の妻、藤山彩香だ。
彩香は元皇族の血を引き、太郎と一緒になったが、3年前に太郎を亡くした。

 当然、財閥を誰が引き継ぐかで、家族間の紛糾があったが、亡くなった太郎の意志で藤山財閥を引き継いだ。
財閥を引き継ぐと、太郎の意志を継いで、養護学園を創立して理事長に収まったが、その学園で、生徒が自殺を図ったという知らせで、学園に向かっている。

 学園は東京から遠く離れた、那須連峰の麓にあり、高速に乗って車を飛ばした。
東北自動車道に入り、那須を目指して走ると、2時間程でインターチェンジまで来た。
「もうすぐ学園だわ」高速を降り、一般道を走って行くが、行き交う車はなく、真っ暗な暗闇を、ヘッドライトを頼りに走っていくと、学園へ続く道路が見えてくる。

 「着いたわ」ホッとしながらも、車を走らせると、学園の建物が見えた。
その建物は、深夜だというのに、灯りが灯されており、車を停めると、走るようにして学園に向かう。

 学園のドアを開け、中に入ると園長の片岡が「申し訳ありません!」彩香に頭を下げた。
「そんな事より、具合はどうなの?」
「命は取り留めましたが、精神的に異常が見られまして…」
「そう、命には取り留めたんだ…。よかったわ」

 「はい。この事は外に漏れる事はありません」
「口止めしたの?」
「勿論です。こんな不祥事が役所に知られたら、認可も取り消され、かねません!」片岡の説明に彩香は頷くだけだ。

 暫く片岡と話すと「その子と会えないかしら?」切り出す。
「今は無理です。明日になれば落ち着くと思いますが…」
「わかった、明日でもいいから会わせて。それにしても、どうして自殺なんか図ったのかしら?」

 「私にもわかりません。それよりも、お疲れでしょうから、お休みになってはいかがで…」
「そうさせて」彩香は片岡が用意した部屋に入ったが、部屋には粗末なベッドが置かれているだけだ。

 「こんな時だし、我慢しないと」不自由なく育った彩香にとっては不満だが、そのベッドに横になった。
「でも、どうして自殺なんかしたのかしら?」彩香は考えたが思い当たる事は何もなかった。

 翌朝、目を覚ました彩香は「あら、何時の間に、あんなのが建ったのかしら?」窓からは建物が見える。
「園長に聞かないと…」ベッドから降りて、片岡の元へと向かうと、ここに住む生徒達と出くわした。

 「元気ないわね。子供なんだから、もっと元気でないと…」そう思いながら見ていると、生徒は全て女だけで男はいない。
「あら、女だけなんだ…」不自然と思いながら見ていると、年齢にもバラツキがあり、中○生と思われる女が多い。

 彩香は気になったが、片岡のいる理事長室に入った。
「理事長、わざわざお出で頂かなくてもいいのに…」
「そんな事気にしなくていいの。それよりも、新しい建家があるけど何なの?」
「ああ、来客用の事ですね。事後報告で申し訳ありませんが、こんな田舎ですから来客用にと宿泊施設を造ってまして…」

 「そんな勝手なまねされたら困るわ。理事長の、私のことわり無しでするなんて、問題よ」
「申し訳ありません。今後注意しますから、今回だけはご勘弁下さい」片岡は彩香の前で正座して土下座した。

 「そこまで言うなら、今回だけは勘弁してあげる。それよりも、自殺した子はどうなのよ?」
「かなり落ち着いて、話せるようにはなりましたが…」
「今から会うのは無理かしら?」
「勿論無理です。もう少し、落ち着くまで待ってください」片岡の説得に彩香は従うしかなかった。

 会うのを拒まれた彩香は、暇に任せて新しく建った建家に入ると、建物の中は壁で仕切られ、それぞれ独立した部屋になっている。
そのドアを開け中に入ると「何なのよ、気色悪い部屋だわ」壁や天井が赤く塗られており、まるで風俗店のようになっていた。
それに、テーブルやソファーもあり、大きめなベッドもある。

 「こんな風には、造らなくてもいいはずよ…」見渡しながら、片岡への怒りを感じていく。
「他はどうなのかしら?」気になって、他の部屋を調べると、同じように赤く塗られ、風俗店と同じ作りになっている。

 「こんなの建てるなんて、許せないわ、作り直させないと」込み上げる怒りを抑え、建家から出ると「あんなところにも、建てて」また、真新しい建家が目に入った。
「勝手な園長だわ、後で懲らしめないと」愚痴を言いながら入っていくと分厚いコンクリートが剥き出しになっており、なおも入ると金属製のドアがある。

 「一体、どうなっているのよ」疑問を抱きながらドアを開けると、今度は鉄格子の部屋があり、檻のようになっていた。
「不気味な感じがする…」鉄格子に沿って歩くと、人の気配がする。
「誰かいるんだ…」気配がするほうに歩くと、ベッドに横たわった中○生と思われる少女がいた。

 その少女は、怯えた様子で焦点が定まっていない。
「どうして、ここにいるのかしら?」不思議に思い、鉄格子の中に入って少女に近づくと両手、両足を縛られ、動けないようになっていた。

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 「どうして、こんな事をされたの?」少女に尋ねたが応えない。
「とにかく、解いてあげないと…」手足を解いていくと「おばさん、誰なの?」初めて口を開いた。
「ここの理事長よ。私が、この学校を建てたの。それより、どうしてこんな所にいるの?」
「お仕置きなの。園長の言う事を聞かなかったから…」

 「どんな事を、言われたの?」
「知らない男に抱かれろと言われたから断ったの。そうしたら…」少女はそれだけ言って泣き出した。
「抱かれろって、まさか売○を?」亡き、夫の意志で建てた養護学園で、売○が行われているとは、彩香には信じられなかった。

 それでも、気を取り直して「そんな事っを言われたのは初めてなの?」
「ううん、前からだよ。5回程一緒に寝たけど…。でも、昨日はイヤだったから断ったの…」
「どうしてなの?」
「変な事する人だから。縄で縛って体を叩くの。優しく抱いてくれる人だったら断らないけど…」少女の話に呆然となった。

 (そんな、事あり得ないわ…)信じたくはなかったが「そんな事言われるのは、あなただけなの?」と尋ねた。
「私だけではないわ。高学年は皆よ。妊娠しないようにと薬を飲まされて…」それだけ言うと黙り込んだ。

 暫く、沈黙が続いたが「園長のところに行きましょう!」と腕を取った。
「イヤ、そんな事したらお仕置きされる!」
「お仕置きって、どんな事なの?」
「裸にされて、鞭でぶたれるの。そして、オチンチンで…」それだけ言うと、また泣き出した。

 「園長に、オチンチンでやられたの?」彩香の言葉に、黙ったまま頷いた。
(許せない。こんな少女をレ○プするなんて許せない!)怒り心頭の彩香は、少女を残して建物から出ると、片岡の元へと向かった。

 そして、片岡に会うなり「自殺した子に会わせて、今すぐに!」叫んだ。
彩香の勢いに「わかりました、こちらです…」片岡も負けて、学園の医務室に連れて行った。

 医務室には、女性がいて少女の看護をしている。
「あなたは誰?」
「保健婦の田中です。子供の健康管理をしてます…」
「この子と話がしたいけど、いいかしら?」彩香の言葉に保健婦も困った顔をしたが「私が責任取るわ。あなた達は外に出て!」強引に片山と保健婦を外に追い出した。

 「誰もいないから、正直に応えて。どうして死のうと思ったの?」彩香が尋ねても少女は何も応えない。
「売○させられていたんでしょう。それがイヤで、死のうと思ったのね?」彩香が言うと、少女の目からは涙が流れ出した。

 (やっぱりそうなんだ。とんでもない園長だわ)彩香はそれ以上は何も言わず、黙っていると「売○だけじゃないの。もっとイヤな事もやらされるのよ…」やっと口を開いた。
「酷い事って、どんな事なの。私だけに教えて欲しいの」
「言えない、思い出したくもないし…」また口を閉ざした。

 (これ以上は、無理だわ…)彩香もそれ以上は聞かず、保健室を出て「園長、お話ししたい事があります!」語気を荒立てて言った。
「ここでは何ですから、私の部屋で」片山は彩香を園長室へと案内し、部屋に入ると彩香は「園長、どうして子供達にあんな事をさせるのよ!」怒鳴るように言う。

 「あんな事と、おっしゃっても、わかりませんが?」
「とぼけないで。売○よ。ここの生徒に売○させているのでしょう!」
「理事長といえども、許しませんよ。どうして、私がそんな事をやらせるんですか。証拠でもありますか?」

 「あるわ。売○を断ると、鉄格子の部屋に閉じこめているしね!」
「面白い事をおっしゃいますね。一体、どこにそんな鉄格子がありますか。あったら、お目に掛かりたいですね」

 「そこまで言うなら見せてあげる。付いてらっしゃい!」彩香は憤りを感じながら片岡と一緒に先程の建物に入った。
建物に入ると、今まで強気だった片岡も動揺している。
「ここよ、この奥が鉄格子になっているのよ!」ドアを指さし、開けようとしたが、鍵が掛かっていて開かない。

 「理事長、ここは倉庫になっているんですよ。冬は食料が無くなるんで蓄える所です」
「だったら、ここを開けて。今すぐに!」
「鍵が無くて、今は無理です…」
「だったら、持ってきて今すぐに!」

 「わかりました。持ってきます」片岡は機嫌悪い顔をして、鍵を取りに戻った。
暫くしてから、職員と一緒に片岡が現れ「理事長、ここの責任者も連れてきました」
「それより鍵よ。早く開けなさい!」
「わかりました…」責任者と言われた男が、鍵を開けた。

 「園長、言い訳は聞かないわよ」そう言って、ドアを開けて中に入り「これでも、
まだ認めないのね」鉄格子の部屋を見られた片岡は「何時の間に、こんなしたんだ。前とは違っているじゃないか!」責任者を叱った。
「申し訳ありません、盗まれないようにと、このようにしまして…」あくまでも白を切った。

 それには「ふざけないで。そんな言い訳、通用するわけないでしょう。あなた達はここにいる資格なんてないわ。2人ともクビよ!」彩香の声がコンクリートに響き渡った。

 「そこまで言われたら、こっちにも覚悟がある。暫くここにいろ!」片山は彩香を押さえつけた。
「園長、お手伝いします!」責任者も加わり、2人掛かりで彩香を押さえつけると、鉄格子の部屋に入れ、粗末なベッドに乗せて縛っていく。

 「やめなさい。そんな事は、犯罪よ!」
「わかっている。だからあんたには、消えて貰わないとね」
「殺すの、この私を?」
「イヤ、殺しはしないさ。世間から消えて貰うだけだ」そう言い残して2人は鉄格子に鍵を掛けてドアを閉めた。

 ドアが閉まると、照明を点けてないから真っ暗闇になった。
「誰か、いないの~!」彩香が叫んでも返事がない。
「さっきまでいた子は、どうなったのかしら。鍵が掛かっていたということは、連れ出されたんだ…」誰もいないとわかると、恐怖を感じていく。

 「負けないわ。あの子だって1人でいたんだし…」手足を動かしたが、縛られて何も出来ず「諦めるしかないわね」おとなしく時の過ぎるのを待った。
どれくらい時間がたったのか、彩香は知るよしがなく、暗闇の中で、何時しか眠り込んでしまった。

 その眠りを破り、4人の男を引き連れて、片岡が現れた。
「理事長、待たせたな!」片岡は彩香の頬を撫でだし、それには「何するの、触らないで!」声を上げた。

 「強がりも今だけだ。いずれ、泣く事になるからな!」
「馬鹿いわないで。私が、どうして泣くのよ」
「まだわかっていないんだ。始めろ!」片岡の合図で照明が灯され、部屋が煌々と照らされた。

 「眩しい!」暗闇に慣れた瞳には、強い灯りが眩しすぎる。
暫く目を閉じ、慣らしてから目を開けると、初めて見る顔がいる。
「理事長。言っておくが、ここではいくら泣いても、外には聞こえないんだ。土下座して、俺の言うがままに動くというなら、勘弁してやる!」

 「バカ言わないで。誰が、あんたに土下座など、するものですか!」
「最後の望みも自分から捨てるのか。仕方ない、やれ!」片岡の合図で彩香を縛った縄が解かれるが、これから行われる、生き地獄の始まりだった。
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